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坂にて

 バス停を降りてから道なりに車の流れに沿って一区画歩くと赤い円筒形のポストがある。それを目印にして左に折れて狭い路地を真っ直ぐに進む。道幅は車が一台通り抜けるには十分だが二台はすれ違えないという程度である。バス通りを外れると商店らしいものはほとんどない。新旧の家屋が混在する中を五分ほど歩くと荒物屋と酒屋が向かい合ってあり、そこから緩い上り坂が始まっている。坂の両側は家々が少し奥へ引っ込むようにして道幅を保ちながら桜の並木が続いている。その為かもしれないがここだけ空間が開けているように見えた。
 五歳くらいであろうか女の子を連れた年齢は私とさほど変わらない母親らしい女性とすれ違った。彼女はすれ違いざまにちょこんと頭をさげて会釈をした。私はあわてて会釈を返したが既に子供に引っ張られるように勢いをつけていた彼女はやや後方に通り過ぎていた。どこかで会ったことのある女性なのであろうか、それとも彼女は誰にでも会釈を交わして通り過ぎて行くのであろうか。私は一抹の爽やかさを感じながら振り返ってふたりの背中を目で追い、「いってらっしゃい」と胸の中で呟く。坂はまだ半分ほどのところ、目的の場所まではまだ道のりがある。私は止めた足をまた運び始めた。
 何のことはない、それだけの話。でも、たったそれだけのことが私には嬉しかった。
 
 
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テーマ : ひとりごと。
ジャンル : 日記

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